着床前診断 PGD ( Preimplantation Genetic Diagnosis )とは、 精子と卵子を体外受精( IVF) し、女性の体内で妊娠が確認される前(着床前)に受精卵の染色体や遺伝子について診断を行った後、選別された受精卵を子宮に移植する生殖補助医療技術(ART)です。着床前診断により、受精卵の染色体異常や遺伝子による疾患や症候群の調査、男女産み分けが可能です。
着床前診断が認定されている国
1990年にイギリスで初めて報告され、ドイツ、スイスなど実質的に禁止している国もありますが、アメリカ、アルゼンチン、タイ、インド、中国などで実施されています。
着床前診断の必要性について
自然妊娠では体の中で受精した受精卵の内、25〜30%しか赤ちゃんとして生まれてくることができません。これは、受精卵の多くに染色体異常があり、着床しなかったり、着床しても流産や死産を起こしてしまったりする事が大きな原因の一つです。受精卵の内、染色体異常を持つものの割合は34歳以下の方で59%、35〜39歳の方で63%、40歳以上の方ですと74%にもなります。染色体に異常をもつ受精卵の97%以上は着床しても流産、死産してしまいます。
着床前診断は、不妊症や習慣流産、長期の不妊治療などでお悩みの方が流産を回避し、新しい命の育みを可能にする技術で、着床前診断を受けると、染色体異常で着床できなかった受精卵、流産する確立が極めて高かった受精卵を選別し、胎児として発育できる受精卵だけを子宮に戻すことができます。体外受精後の流産はこのような受精卵の染色体異常による場合が多く、着床前診断を受けることで、流産率が減少することが証明されています。
妊娠の可能性の要因は、女性の年齢、過去の妊娠歴、ホルモン検査等の結果、検 査されている遺伝病の状態等さまざまですが、着床前診断( PGD )プログラムの成功率は、最終的に移植される受精卵の質、生殖力により異なります。 受精卵の質は
卵子の質に依存するところが大きく
、卵子の質は、採卵時の女性の年齢や卵巣機能の状態に大きく左右されます。着床前診断の利点は、女性の体内に遺伝子異常のない受精卵だけを移植できるところです。このため、 PGD 検査を行なった後の妊娠中検査で胎児の遺伝子異常が見つかることは非常に稀です。体外受精で染色体に異常のない胚盤胞を子宮に戻すことで、体外受精の妊娠率が飛躍的に向上します。
着床前診断の方法
多くの卵子を採取するため、卵巣刺激の薬剤注射を子宮まわりに毎日自己注射します。成熟期を見計らい卵子を採取し、研究室で精子との受精を行い体外受精 ( IVF) をします。受精後、受精卵は研究室で 2 日間分割を続け、受精卵が 8 細胞まで分割されれば、検査が可能です。受精 3 日目の胚から 細胞が摘出され、遺伝子異常があるか検査を行います。細胞を 1 〜2個取り出しても胎児への影響はなく、取り除かれた細胞の代わりに胚は新しい細胞を作り、続く細胞分割が 2 〜 3 時間遅れるだけで、それ以後は胚の細胞数は元に戻り正常な発達を続けます。異常のなかった受精卵を女性に移植します。
着床前診断のメリット
PGD は、一度で複数の遺伝病を特定することが出来ず、受精卵中の特定の遺伝病 1 種類だけの検査となり、胎児が特定された以外の障害を持つことがないとは言い切れませんが、中絶の可能性を考える必要がないので、女性の心身への負担はずっと軽くなります。着床前診断を受けることで、染色体異常や遺伝子疾患の可能性を考えて避妊されていたカップルが妊娠の決断をされることが容易になります。
受精卵より発育した胎児の異常を調べる検査には羊水検査、絨毛検査、超音波検査などの出生前検査がありますが、リスクも伴います。羊水検査後の流産、子宮内感染といった重篤な合併症、子宮内に細菌が進入し、敗血症ショックを起こし、子宮、卵巣、両下肢、右手指を切断せざるを得なかった症例や母体死亡に至った症例、子宮を全摘されてしまった症例が報告されております。
一方、絨毛検査では羊水検査よりもさらに流産率が高くなり、赤ちゃんの障害も報告されています。羊水検査や絨毛検査は、母胎を危険にさらす可能性の高い検査であると言えるでしょう。
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